2022.3.18
施設の介護について
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者
増田 高茂(ますだ たかしげ)

老人ホームの食事 イベントや工夫で進化する施設の食事

施設の介護について

老人ホームを選ぶ際、場所や価格が最も重要と考える方も多いのではないでしょうか。確かに施設の立地や価格は最低限抑えなければならないポイントですが、それだけで決めてよいのでしょうか?実は施設入居後に最もクレームとなりやすいのが食事です。今、老人ホームでも生活の質を高めようと、食事についても様々な取り組みを行っています。ここでは毎日の暮らしに欠かせない老人ホームの食事について説明します。

老人ホームの生活の最大の楽しみは食事

老人ホームの食事_食事風景

入居者にとって毎日の生活の中で一番の楽しみは食事です。施設でも様々なイベントなどを行っていますが、老人ホームの生活は単調になりがちです。そのため、食事が大きな楽しみとなります。施設側も様々な工夫をしていますが、食事が美味しくないことが原因で施設を出たいという訴えにつながることもあるので注意が必要です。

施設側も食事の工夫に力を入れている

老人ホームの食事は高齢者向けに塩分が制限されていたり、油を少なめにしたりしているため、美味しくないと感じる方も少なくありません。もともと日本人の昔からの食事習慣には、塩分が多く含まれているのもその一因かもしれません。
しかし施設でも出汁を上手く使うことで塩分を抑えながら味を良くするなど、様々な工夫で食事の味も改善されています。施設によっては元ホテルの料理長のような方が監修に入っているようなところもあります。
また、多くの施設では職員が入所者と同じものを「検食」しています。味付けが濃すぎないか?薄すぎないか?硬くて噛めないものは無いか?などチェックし、厨房スタッフと共に改善に取り組んでいます。

食事の苦情

老人ホームの食事_美味しくない

「老人ホームの食事が美味しくない」という声は、個人の好みと言えなくもありません。同じ食事でも「美味しい」という方も「美味しくない」という方もいます。
前項でも述べたように、老人ホームの食事は油を少なめにしている場合があります。そのため揚げ物の頻度が低かったりします。また、衛生管理が難しくなるため、お刺身のような生ものの提供は少なくなります。「毎日、刺身を食べていた」という方には、そのような環境に置かれれば、食事が美味しくないと話されるのは仕方のないことかもしれません。
施設にとっても家族にとっても「食事が美味しくないからここにいたくない」となることは避けたいと思います。もしも「食事が美味しくないよ」という声を聞いたときは、その方の好みのものを時々差し入れるようにするのも一つの方法です。施設と相談してみるのが良いでしょう。

施設見学で試食できるところも

入所前の見学時に食事を試食できる施設もあります。用意が必要なので事前に相談、食事の申し込みをする必要があります。また、その場合は食事のタイミングに合わせて施設見学する必要があります。(施設の運営状況によっては日程的に会わないこともあるかもしれません。)

老人ホームでの飲酒について

今、施設でもお酒を楽しめるところが少なくありません。医師から禁止されていない方がその対象となります。飲酒量も医師や家族と相談して決めています。ただし、お酒を止められている方やアルコール中毒の既往歴のある方がいる場合などは、お楽しみいただく場所を限定したり、また、お酒類は施設にて預からせてもらうケースが多いです。

老人ホームの食事提供

老人ホームの食事

施設入所される高齢者の多くは何らかの基礎疾患を抱えており、健康に配慮された食事であることが大切です。そのため、普通食であっても塩分や硬さに配慮されています。また、彩に配慮したり、季節の食材を取り入れたりと、見た目や演出でも食欲がわくように配慮し、少しでも食事を摂りやすいように配慮しています。
中には炊き立てのご飯にこだわるような施設もあり、食事時間の直前に炊き上がるように準備しているところもあります。炊き立てを出すようになってから、食の進みが以前よりもグンとよくなったという話も聞きます。

食事形態の変更

介護状態になり物を飲み込む力=嚥下能力が低下する方は少なくありません。食事形態では主食であるご飯は状態により普通、軟飯、お粥、ミキサー粥といった形態、おかずも普通、一口大、刻み、極刻み、ペーストといった形態がよく見られます。さらに刻み食には飲み込みやすいように、あんかけ状のとろみがかけられ、むせないように配慮することもあります。お茶やみそ汁もその状態に合わせてとろみを段階的につけることがあります。
また、病状によっては禁止されている食材や塩分制限など、食事形態の変更が必要な場合があり、減塩食、糖尿食、透析食といった形で提供されます。
「魚が苦手」という方や、「朝はパンを食べるのが習慣」といった、個人の好き嫌いや習慣に合わせて対応している施設やメニューを選べる施設もあるので、事前に確認すると良いでしょう。

自分で食べるための道具・食べこぼし対策

介護が必要な状態であっても食事はできる限り自分で食べたいと考える方が多いです。箸で食べにくい方にはフォークやスプーンが用意されるなどの配慮がされています。脳梗塞等の後遺症で麻痺が残るなど、手を思うように動かしにくい方用に握りの部分に加工が施されたスプーンもあるので、状態に合わせて使用している方もいます。
また、思うように、口に食べ物が運べずこぼしてしまい、衣類が汚れてしまうことが無いように、食事用のエプロンをお勧めすることもあります。

静岡有料老人ホーム_資料請求

食事量は健康のバロメーター

施設職員は毎食の入居者の食事量をチェックしているところがほとんどです。なぜなら食事摂取量から健康状態の変化に気づくことがあるからです。体力の低下と共に食事摂取量が落ち、さらに体調が悪化していくことがあります。食事量の変化に気づくと施設では、食事形態を食べやすいように工夫したり、メニューを変更したりといった対応をします。また、義歯の調子が悪くなり、食事量が減るようなこともあるため、食事量のチェックは施設では、体調管理の重要なデータとなっています。

外食、おやつの購入について

施設で外食に出かけるイベントを企画することもありますが、コロナ禍の現在はテイクアウトという形で実施しているところもあります。近くの銘店の品や、入居者の昔なじみの店などの高級店をお取り寄せするような施設もあります。そのような施設であればお好みの店をリクエストしてみるのもいいかもしれません。
また、定期的に嗜好品などの注文を受けて購入できる施設もあります。

アクタガワの老人ホームの食事について

プレミアムハートライフ、ハートライフ、ハートフルホームでも入居者様の楽しみである「食」について、安全と安心と喜びあるものとなるよう様々な工夫をしています。普段の食事については毎月の厨房との打ち合わせで食事の反省点を確認したり、次月のイベントに向けた準備を確認したりしています。
また、提携の魚屋によるお刺身の提供や、近隣の飲食店プロデュースの豪華ランチなども企画され、喜びの声をいただいております。このほかにも様々な食に関する取り組みが行われています。

アクタガワのそば打ち

老人ホームの食事_蕎麦打ち

ハートライフ小石川の蕎麦打ち

アクタガワの、施設の食事の大きな特徴は「蕎麦打ち」です。五感の生活のコンセプトに基づき始まったこの蕎麦打ちは、職員が研修を通じて社内資格の蕎麦打ち検定を受験し、合格した者だけがお客様に提供することを認められています。目の前で打たれた出来立ての蕎麦はいつも好評で、各施設バリエーションを増やしながら入居者様にお楽しみいただいています。

毎月のお楽しみ「ぺんぎん食堂」

有料老人ホーム_静岡

初夏のうな丼定食

老人ホームの食事_ハンバーグ

ハンバーグとチキンライスランチ

プレミアムハートライフ、ハートライフの毎月のイベント食、ぺんぎん食堂は入居者様のお楽しみの一つ。旬の食材を目の前で調理してもらい、味わっていただいています。

職員が趣向を凝らすイベントなどの特別食

老人ホームの食事_おでん屋台

おでん屋台の演出・お好みで選んでいただきました。

老人ホームの食事_ラーメン

たまにはラーメンを食べたいというリクエストに応えて

老人ホームの食事_ラーメン

職員も入居者様の大きな楽しみの一つが食事であることから様々な趣向を凝らした企画が行われています。各施設の食事イベントの様子はこちらをご覧ください。

入居者の気持ちに寄り添った「食」を目指して

単調になりがちな老人ホームの暮らしにおいて「食事」は生活の重要なアクセントになります。食事に関して毎日ただ「提供」するだけの施設では、刺激もなく、QOL(Quality of Life=生活の質)を向上させることはできません。いつもは食事を残してしまう入居者が「お寿司が出た」と喜んで完食し、「もっとないの?」と話されることもありました。毎日の生活に楽しみが持てることは、毎日の生活への意欲にも繋がります。そのため「食」を軽視することはできません。
アクタガワの老人ホームでは単なる楽しみだけではなく、毎日の生活への意欲にアプローチする食事の提供に取り組んでいます。

浜松市老人ホーム_静岡

 

社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者
増田 高茂(ますだ たかしげ)

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。