2024.2.29
施設の種類
施設の選び方
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者
増田 高茂(ますだ たかしげ)

認知症でも老人ホームに入居できる?施設入居のタイミングと見学のポイントを解説

施設の種類

ご家族が認知症になったらどうするか、認知症でも老人ホームに入居できるのかと考えたことがある方も少なくないのではないでしょうか。結論として認知症の方も老人ホームに入居することができます。認知症の方が老人ホームに入居するタイミングは?認知症でも入居できる老人ホームを決める時のポイントは?老人ホームに入居すると認知症が進行するのではないか?といった疑問についてこちらの記事ではお答えします。

認知症と診断されてから老人ホームを探すタイミング

認知症診断後の生活

認知症と診断された後、認知症の種類にもよりますが、急激に進行する人ばかりではありません。認知症患者の約半数が患うアルツハイマー型認知症は、ゆっくりと進行していきます。認知症の方は生活に変化がない方が落ち着いて暮らせると言われています。軽度であれば自宅での生活を続ける方が多いですが、認知症が進行し、在宅介護が大変になると老人ホームの入居を検討される方も多いです。

しかしいざ必要となった時に施設を探し始めると希望の施設が満床となってしまっていたり、満足のできる施設に巡り合えない場合もあります。ご家族が施設を気に入ったとしてもご本人が施設に合わないと感じることもあります。ご本人とご家族双方が納得のいく施設を選ぶために、余裕をもって事前に資料を取り寄せるなどして施設を探し始めることをお勧めします。

認知症の方が老人ホームに入居するタイミング

中度の認知症になると中核症状が現れるなど認知症の種類によって症状が進行していきます。中核症状については以下の図で説明しています。

認知症の中核症状

これらの症状や認知症の型による症状が現れ、在宅介護が困難になることで老人ホームに入居される方が多いです。具体的な例として、以下のようなタイミングで老人ホームに入居された方もいます。

1人暮らしが困難になった

家族が遠方に住んでいる場合は認知症の方でも1人暮らしをしている場合があります。1人暮らしを続けていく中で認知症が進行していくと、様々な問題が生じて1人で暮らしていくことが困難になってきます。認知症の症状は個別に代わりますが、1人暮らしが困難となった具体例として買い物に行って帰り道がわからず帰れなくなった、火の扱いが適切にできなくなりボヤ騒ぎが起きたなどです。家族だけでは対応しきれない問題が生じると、施設入居となるケースが多くあります。

介護者がついていないと危険

認知症の周辺症状(BPSD)というもののひとつに徘徊があります。徘徊とは目的もなく歩き回ることですが、認知症の方が家を出て徘徊するようになると行方不明になることも少なくありません。徘徊中に事故にあうことも懸念されるため、常に介護者がついていなければならなくなり、自宅での介護が大変になってくると入居を検討する場合が多くなります。

介護者の負担が大きい

認知症の方の症状が進行していくと排泄の問題が出てくることがあります。トイレの場所がわからなかったり尿意・便意を認識できずに失禁してしまうケースが増えることで、場合によっては室内の衛生を保てなくなることもあります。尿失禁で汚れた衣類を押し入れなどに隠すこともあり、それが繰り返されると介護者の負担が大きくなり、自宅での介護に限界を感じて施設に入居となるケースがあります。

上記した事例は数ある内のひとつにすぎませんが、認知症の進行により一人暮らしが困難になったことや家族での介護が困難なレベルに達したことで、老人ホームなどの施設に入居される方が多くいます。

認知症の方が入居できる老人ホーム

認知症の方が入居できる老人ホーム

認知症の方が入居できる施設にはグループホーム(認知症対応型共同生活介護)、介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、特別養護老人ホーム(特養)があります。施設形態ごとに対象者や条件が異なるため、相応しい老人ホームを探すと良いでしょう。

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)

グループホームは認知症と診断された方のみが入居できる老人ホームです。対象者は原則65歳以上で、地域密着型サービスというものになるため施設が所在する市区町村と住民票の住所が同一である必要があります。また、介護度が要支援2~要介護5の方が入居できます。グループホームの特徴は認知症専門の老人ホームのため、認知症対応に特化していることです。複数の個室と居間、台所で構成されたユニットという生活空間の中で共同生活を送り、1ユニットは5~9名という少ない人数で生活を送ります。共同生活となるため、入居者と介護職員が協力して食事作りや掃除等の家事を行うことも特徴です。ただし医療的ケアが必要になってきたり介護度が重くなってくると施設で対応ができず退去を求められる場合もあります。

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介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームは認知症の有無にかかわらず原則60歳以上の高齢者の方が入居できる老人ホームです。対象者は施設により異なりますが、一般的には要支援1~要介護5が入居でき、生活全般のサポートを受けながら生活します。24時間介護職員が常駐し、入居者3名に対し介護職が1名以上の配置が規定されており、看護師もいるため安心した生活を送ることができます。設備や地域によって費用が幅広く設定してあり、種類が豊富なことも特徴です。

また、有料老人ホームの中には住宅型有料老人ホームという種類もあります。住宅型有料老人ホームの中には認知症の方を受け入れている施設もありますが、こちらは施設の職員が直接介護サービスを提供するわけではなく、利用したい介護サービスを外部の事業所と契約する必要があるため注意が必要です。

アクタガワが運営する介護付き有料老人ホームの施設はこちら

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

サービス付き高齢者向け住宅は高齢者向けの賃貸住宅で、入居対象は60歳以上の高齢者です。施設の運営方針により元気な方を対象としている施設や、介護が必要な方を対象とした施設など様々です。認知症の方でも入居可能な施設もありますが、中には認知症の方を全く受け入れていない施設や認知症の状況によって受け入れ可能な施設もありますので、それぞれの施設ごとに確認が必要です。賃貸方式のため敷金がありますがその他の費用は部屋のサイズやサービスにより多種多様です。介護相談と安否確認がサービス内に含まれていますが、その他の介護サービスを利用する際にはそれぞれ個別で契約する必要があります。中にはデイサービスや訪問介護などが併設されている施設もありますが、介護度が重くなると介護サービスの利用が増える可能性が高いため、有料老人ホームよりも月額費用がかえって割高になる場合もあります。

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老人ホームにかかる実際の費用の解説はこちら

特別養護老人ホーム(特養)

特別養護老人ホームも認知症の有無にかかわらず入居できる老人ホームです。対象者は原則65歳以上で要介護3以上の常時介護が必要な方です。しかし認知症により日常生活に支障をきたしている場合は要介護1や要介護2でも入居対象となる場合があります。

公的施設となっており費用が民間施設と比べて抑えられるため入居待ちが多く、要介護状態の重い方や生活困難な方は入居の優先順位が高くなります。低所得者の場合、補足給付を利用できます。補足給付は介護保険施設等で通常は全額自己負担の食費や居住費に負担限度額が設定され、それを超えた費用を給付されます。

ただし、認知症受け入れ可能であっても自傷・他傷行為や暴力を振るうなど周囲に迷惑を掛ける恐れがある場合は入居を断られたり、退去を求められたりする場合もあります。そのような場合であっても専門の医師と連携するなど対応可能な施設もあります。

認知症の方が老人ホームを決める時のポイント

老人ホームを決める前には気になる施設を見学し、設備や雰囲気を知ることが重要です。施設ごとにそれぞれ特徴があり、雰囲気も異なります。体験入居ができる老人ホームもありますので、見学時に確認すると良いでしょう。この章では、認知症の方に向いている老人ホームのチェックポイントを生活・設備・介護・医療体制に分け、下記表から解説します。

老人ホーム_チェックポイント

生活について

生活面は「普通の生活が送れるのか?」という視点で老人ホームを見ていきましょう。普通の生活とは、今まで過ごしてきた生活スタイルをなるべく崩すことなく生活を送れるかということです。認知症の方は環境の変化にストレスを強く感じるため、生活スタイルが変化するとすぐに適応するのが困難です。施設によっては家で使用していた使い慣れた家具を持ち込めることもありますので、見学時にチェックしましょう。

他の確認したいポイントは食事の提供での食事形態やアレルギーに対する配慮、家事支援の内容、レクリエーションなどの活動への参加、庭やテラスなど季節を感じられる環境かどうかです。

設備について

設備面は「入居者の安全や快適な暮らしへの配慮があるか?」という視点で老人ホームを見ていきましょう。自分の部屋やトイレの場所を認識できるような配慮があるかなど、認知症であることに対する配慮がされているか確認しておきましょう。また、清掃がきちんとされている施設は、入居者に対しても丁寧な対応ができている傾向があるので、チェックしておくと良いでしょう。

介護について

介護面は「要介護度が高くなった場合や認知症への対応力はどうか」という点は確認しておく必要があります。また、職員の声掛けの様子は重要なポイントです。丁寧でよそよそしい声掛けで無く、かといって無礼でない、相手に対して敬意が感じられるような関係性が理想的です。また実際に施設を利用されている入居者の雰囲気や、施設内での過ごし方も確かめておきたい点です。サービス付き高齢者向け住宅は夜間に職員が不在になる施設もあるので、確認しておくと良いでしょう。

医療体制について

医療面は「日常や緊急時の対応」「在宅レベルの医療行為への対応力」について見ていきましょう。急な体調不良の場合、施設で病院に連れて行ってくれるのか?救急搬送はどのように手配されるのか?薬の管理は誰が行うのか?リハビリは実施してくれるのかといった点を確認しておくことをお勧めします。

老人ホームに入居すると認知症は進行する?

老人ホームに入居すると認知症が進行するという話を聞いた方もいるかもしれません。結論からお伝えすると、老人ホームに入居したら認知症が進行しないと断言はできません。認知症の方は変化に適応することが苦手なため、自宅から施設へと生活が変化するストレスなどが原因で認知症が進行するリスクがあります。また、施設入居しなくても自宅の部屋を変更したり、引っ越したりすることでも認知症が進行するリスクがあるのです。そういったリスクを念頭に、老人ホームでは認知症ケアに取り組んでいます。具体的には、自宅で使用していた家具等を使用したり、レクリエーションや会話で脳や体の活性化を促したりして認知症が進まないように配慮しています。

当社の認知症対応について

認知症があっても入居できる老人ホームはありますが、その対応方法などにより、認知症が急激に悪化する可能性もあります。その対応が本人にとって良い選択か否かしっかりと判断する必要があります。入居前には施設見学や体験入居を活用して候補の老人ホームを理解した後、契約することをおすすめします。当社はグループホーム、介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅を運営しております。アクタガワは認知症対応に努め、認知症の入居者の行動を否定しないことや信頼関係を構築できるような関わりに取り組んでいます。

認知症と施設入所

静岡有料老人ホーム_資料請求
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者
増田 高茂(ますだ たかしげ)

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。