2024.8.27
施設の選び方
介護福祉士
花井 敦由奈(はない あゆな)

老人ホームに入るには?5つの条件と入居までの流れを事例と共に解説

施設の選び方

老人ホームへの入居を考えるにあたり、どのような流れで入居まで進めればいいかわからないという疑問があるかもしれません。こちらでは老人ホームに入るための条件と、入居までの流れについて例を交えながら解説していきます。

老人ホームに入るにあたっての条件5つ

老人ホームに入居するには、いくつか条件があります。実は、高齢者が入居できる施設にはいくつかの種類があり、それぞれの施設によって入居条件は異なります。これから大切なご家族の施設入居を検討するなら、老人ホームに入居できる条件は必須といえる知識です。具体的に、重要となる5つの条件についてご説明します。

入居条件①要介護度

要介護度とは、その方の介護の必要度に応じて判定される、介護保険制度における指標のことを指します。要支援1~2と要介護1~5まで、支援や介護が必要ない「非該当」を含めると全部で8段階に分けられます。

「要支援」よりも「要介護」のほうが、介護の度合いが大きく重度であり、数字が大きくなるにつれより多くの介護を必要とする、という意味が含まれています。

介護施設は、要介護度によって入居できるかどうかが異なります。施設の種類別に、どのくらいの介護レベルの方が入居できるのか見てみましょう。

老人ホームに入るには

老人ホームの種類と違いについて 詳細はこちら

入居条件②入居時の年齢

入居時の年齢もまた、老人ホームの入居条件に関わってきます。特に、要介護認定を受けていなくても入居可能な施設では、入居時の年齢で対象外となる場合があるため注意しましょう。ただし、たとえ「65歳以上」などとあっても、条件を満たせば入居可能年齢より若くても入居は可能です。    

入居条件③医療的ケアの有無

介護施設に配置されているスタッフの種類や数の基準は、法律によって決められています。例えば、看護師の配置については、施設によって常勤で複数配置されている施設と、そうでない施設とがあります。

そのため、医療面でどの程度の管理やケアが必要かによって、入居できるかどうかも変わってきます。

「自宅では医療的な処置を家族がしていたから介護士がいれば大丈夫」と思われるかもしれません。しかし、介護施設では、看護師ができる仕事と介護士ができる仕事が明確に分けられており、自宅で家族が行ってきたことをそのまま介護士がすべて行うことは難しいのです。

医師や看護師といった医療スタッフがいない・あるいは少ない施設では、医療行為が多い方の受け入れが難しい場合もあり、たとえ要介護度や年齢の条件を満たしていても断られることがあります。

もし、老人ホームに入居中の方が病院を受診しなければならない場合、どのような状況になるのか気になる方は、以下で詳しくご紹介しています。

老人ホーム入居中の病院受診・通院について 詳細はこちら

入居条件④保証人・身元引受人

基本的に、介護施設への入居は保証人や身元引受人が必要となる場合が多いです。なぜなら、ご本人に万が一のことがあった場合や、重要な意志決定が必要な時に、施設のスタッフでは決められないことも沢山あるからです。

具体的には、以下のような場面で保証人や身元引受人が必要となります。

・利用料の滞納や支払いが困難になった時

・入院手続きや治療方法の意志決定を行う時

・お亡くなりになった時の退去手続き等

・入居トラブルの発生や転居が必要になった場合の対応

たとえ施設から離れた場所に暮らしていても、家族などが保証人や身元引受人として役割を果たせる状況なら、あまり問題にはなりません。しかし、身寄りがない場合は、成年後見人をたてたり民間企業やNPO団体などが提供している身元引き受けサービスを活用することで、入居が認められる場合もあります。                

入居条件⑤収入

介護施設への入居には費用負担も発生します。どのくらいの支払いになるのかは、施設の種類によって異なります。特別養護老人ホームや介護老人保健施設といった公的な施設は、収入に応じて食事代や居室代が安くなる制度もあり、おおよその相場が決まっているため比較的多くの方が利用しやすくなっています。

一方で、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅といった民間の施設は、入居一時金や居室代、食事代などが施設によって大きく変わります。同じ種類の施設でも、都市部の一等地にある施設と地方にある施設とでは、全く費用が違うことも珍しくありません。

介護施設に入居したあと、長期的に利用し続ける予定であれば、将来的に無理なく支払い続けることができるのかをよく考え、選ぶことが大切です。

老人ホームで実際にかかる費用について 詳細はこちら

老人ホームに入るまでの流れ

老人ホームに入るまでには、いくつかの手続きや準備があります。緊急やむを得ない場合を除き、これから施設選びをしていきたい方は、時間に余裕をもって進めていきましょう。できれば、施設入居の検討を本格的にはじめる前に、色々な施設を調べて候補を絞っておくと後悔しにくくなります。          

施設選び

ご本人のこれからの生活に関わることですから、施設選びは慎重に行いたいところです。先ほどもご紹介したように、介護施設にはさまざまな種類があり、その種類ごとに役割や特徴は異なります。「介護施設」とひとくくりにするのではなく、施設の種類ごとの特徴をよく把握しておきましょう。お住まいの役場などには、介護保険や介護施設についての情報をまとめたパンフレットがある場合が多いため、それらを見て「特別養護老人ホームはどんな施設かな?」など簡単にでも知っておくのに便利です。

そして、ご本人と話をしながら、どんな暮らしを送りたいのか希望の条件をあげて、それに近い施設を探すのもおすすめです。

・たくさんの利用者がいる施設がよいのか、それとも小規模でアットホームな施設がよいのか

・個室がある施設がよいのか

・リハビリが充実していた方がよいのか

・医療面でのサポートが手厚い方がよいのか

・行事やレクリエーションの頻度

・余暇活動の過ごし方のバリエーション

・介護が必要になってもずっと過ごせるのかどうか

・施設や職員の雰囲気が合っているかどうか

・無理なく利用しやすい費用かどうか

これらのポイントは、多くの方が施設選びで意識する傾向にあります。ご本人が希望する条件があれば、できるだけ取り入れられるように配慮してあげましょう。最近は、ホームページを充実させている施設が多いため、ウェブサイトやSNSなどでチェックし、候補を絞っていきます。

老人ホームの選び方9つのポイント 良い施設の見極め方についてはこちら

施設見学

気になる施設があれば、資料請求をするのもよいですが、できれば実際に足を運んで見学をしましょう。見学すれば、今現在利用されている方々の姿や職員の接し方、設備の充実度などをよく把握することができます。

見学は、できるだけ事前にアポイントをとりましょう。相談窓口を担当するスタッフがその場にいると、より詳しく色々な質問に答えてくれます。

施設見学では、遠慮なく気になることはしっかり質問した方がよいでしょう。「対応してもらえると思ったのにできないと言われた」といった認識の違いによるトラブルを避けるために必要なことです。

見学のススメ 詳細はこちら

仮申し込み

見学をして、気に入った施設があれば、仮申し込みを行います。施設によっては待機者の数が多く、すぐに入居できるとは限りません。おおよその入居可能時期を教えてくれる施設もありますが、施設に空きがなく待機者も多い施設は、その目処がたちにくい可能性があります。

介護施設への入居時期の希望がはっきりしている場合は、入居したい施設が空くまでの期間、どう過ごすのかも問題になるでしょう。緊急度に応じて、すぐに入居できる施設がよいのか、それとも空くまで自宅で介護を受けながら待てるのかも視野に入れて検討されることをおすすめします。

事前面談

仮申し込みを行ったら、施設側から事前面談や入居審査のための準備としてさまざまな書類を準備するよう言われるのが通例です。

基本的に、どの施設も受け入れる前にはご本人の状態を確認し、受け入れ可能かどうかを検討するからです。

先ほどもご紹介したとおり、施設の種類によって職員の配置やできる対応が異なります。医療面でのサポートがどこまで必要なのか、どの程度介護が必要なのか情報を集めるために、施設のスタッフが後日面談に来て、自宅での様子や介護の状況を聞き取ります。医療面での情報は、かかりつけ医が作成する紹介状や診療情報提供書で把握されるため、こうした書類の準備も求められるでしょう。

体験入居

施設によっては、体験入居が可能です。特に、初めて介護施設を利用する方は、体験入居でどんな生活を送るのか実際に経験することで、施設がどのような場所なのかよく知ることができます。複数の施設の体験入居を行って、自分に合うところを探すのもよいでしょう。

介護施設への入居に積極的でない方にとっては、良い体験ができれば前向きな気持ちになれるチャンスです。一方、あまり良い印象にならなければ、より一層施設入居への気持ちが遠退く可能性もあります。ご本人が不安にならないように、必要に応じて家族の方も面会や電話で声をかけてあげるなど、フォローしてあげる方が良いかもしれません。

また、そもそも体験入居をやっていない、という施設も多いです。その場合、介護保険制度のショートステイを活用して、数日間ほど体験入居のような形で利用できる可能性があります。要介護認定を受けていて、担当のケアマネジャーがついている方は、ショートステイも含めて検討してみてはいかがでしょうか。

入居審査

いざ入居できそうな順番が回ってきた頃に、事前調査や医師からの診療情報提供書、体験入居時の様子などをもとにして、入居審査が行われます。入居審査は、施設側が行うものですので、ご本人やご家族が参加する必要はありません。

仮申し込み時や事前調査時に、明らかに入居条件を満たしていないなど、施設側がすぐに入居できないと判断できる状況であれば、入居審査よりも前に教えてくれることも多いです。しかし、入居審査を経て「入居ができない」と断られるケースもあるため、その心づもりをしていた方が良いでしょう。

例えば、医療行為が施設でできるケアの範囲を超えている、保証人・身元引受人がいない、長期間の入居費用の支払い能力が疑われる状況である、認知症の症状に施設側が対応できない、集団生活を送る上で問題があると判断される、ご本人やご家族の希望の内容に対応できない、等の理由で入居が難しいと判断される場合もあります。

入居審査に落ちたからといって、すべての介護施設で受け入れができないわけではありません。

ご本人に合わない介護施設を無理に選ぶよりも、適切なケアが十分に行える施設の方が、ゆくゆくのことを考えると安心です。入居審査に落ちたとしても、あまり深刻にならず他の候補を探しましょう。

本契約・入居

入居審査が終わり無事に施設の受け入れ準備ができたら、本契約をして入居となります。入居にあたり必要な準備物は、施設によって異なるため事前に案内される内容を確認しておきましょう。

入居にあたり、住民票をどうするのかという問題も出てきますね。基本的に、住民票は住んでいる地にうつすのが原則ですが、それも必須ではありません。

介護老人保健施設のように、一時的なリハビリ目的で入居する施設では、その都度住民票をうつすメリットはあまりないでしょう。一方、ご自宅と施設が離れていて、市区町村が違う場合、住民票をうつした方がメリットが大きい場合もあります。

例えば、要支援の方がサービス付き高齢者向け住宅に入居して、介護予防サービスや地域密着型サービスを利用したい場合は、住民票をうつさないとサービスを利用することができません。

介護施設は、施設の中のスタッフが身の回りの介護や日常生活上のお世話を行う施設と、これらのケアを外部のサービスでまかなう施設の両方があります。住民票をうつした方が良いのかどうかは、施設の種類やご本人の状態により適した方法が異なるため、入居前に施設スタッフに確認しましょう。この点については、あまり心配しなくても施設側から必要に応じて案内されるため、安心してください。

入居間もないうちは、大きな環境の変化ということもあり、ご本人が慣れるまでに時間がかかったり、不安になったりすることも珍しくありません。ご家族としても心配されることがあるでしょうが、いつでも連絡がとれるようにするなどして、不安が少なくなるようにサポートしてあげましょう。

老人ホーム入居の際に住民票は移すべき? 詳細はこちら

老人ホームに入るまで 実際の事例

老人ホームに入るには

ここではひとつの事例を取り上げ、実際に施設探しから施設入居に至るまでの流れを解説します。今回はお母様の施設入居を考えるY様の例をご紹介します。

同居する親の入居を考える子ども(Y様)の場合

Y様はお母様と同居されているものの、ご自分は仕事があるため平日の日中はお母様お一人で過ごされています。今まで活動的に動かれ自分のことは自分で行っていたお母様でしたが、最近は足の上がりが悪く転倒することも増えてきました。転ぶのが怖いからと家にこもりがちになってしまったため、Y様はお母様に外に出てほしいという思いから介護保険を申請し、要支援2の認定が出ました。ケアマネジャーの方と相談し、現在はデイサービスに週2回通っています。

Y様がお母様の入居を考えるきっかけとなったのは、ある日いつも通りにY様が家に帰るとお母様の姿が見えず、家を探すと庭で倒れたまま動けなくなっている姿を見つけたことでした。お母様のお話では、庭の手入れをしようと思ったらバランスを崩して転倒してしまい、そこから体が痛んで起き上がれずずっとその体勢でいたとのことでした。幸い骨折などはなかったものの、今後Y様が不在の際にお母様に何かあった時に誰かの目があった方が安心だと思い、施設入居を考えるようになりました。

確認するポイント

入居を検討するお母様の現在の状態について

介護度:要支援2

年齢:84歳

医療的ケアの有無:高血圧のため降圧剤を毎朝服用しているが、たまに飲み忘れることがある。骨粗しょう症のため月に1度服用する薬があるが、こちらはY様が管理していた。

保証人・身元引受人:Y様が身元引受人、Y様のお兄様が保証人となることになった。

収入:月々の予算は20万~30万程度

施設入居までの流れ

Y様としてはお母様が入居する施設はなるべく今までの生活を継続することができ、今後介護が必要になっても対応してくれるところがいいという希望がありました。

まずはインターネットで老人ホームを検索し、種類に関わらずいくつか施設の資料を取り寄せました。比較的家の近くにある有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホームの資料を取り寄せてみましたが、お母様の今の状態とY様のご希望に添えるのは有料老人ホームではないかという結論に至りました。

それからY様はケアマネジャーやお兄様と相談しながら候補を絞り、希望の施設を見学することにしました。

見学の予約をし、見学時にはお母様もご一緒に行かれ施設の方に施設内を案内してもらいました。外出や面会ができるか、食事はどこで作っているのかなど疑問に思ったことはその場で尋ね、お母様も落ち着いた雰囲気を気に入ったようだったのでこの施設がいいのではないかと考えました。

施設は丁度空室ができたタイミングだったため、その場で仮申し込みをし入居を進めることとなりました。事前面談ではお母様の身体状況の確認や入居に際し必要な書類等の説明を受け、その後体験入居の日取りを決定します。

体験入居では実際に施設で生活を行いましたが、日々の体操やレクリエーションなどに積極的に参加され、お母様は自宅にいたころよりも活動的に動かれるようになりました。その後体験入居の期間が終わり、入居審査でも問題ないと判定され本契約となり、Y様のお母様は有料老人ホームに入居となりました。今ではY様もお母様も安心して過ごすことができています。

あくまでひとつの事例ですが、このような流れで老人ホームへの入居に至る場合もあります。必要に迫られてからの施設探しですと期限が決まっており完全に納得のいく施設に出会えるとは限りませんので、余裕を持っての施設探しをお勧めします。

介護付き有料老人ホームとは?安心の介護サービスをわかりやすく解説

まずはご相談ください

初めての施設探しはわからない点が多いと思います。今回は施設入居の条件、施設に入居するまでの流れを解説しましたが、入居を検討される方おひとりお一人、それぞれ置かれている状況は異なります。このような場合はどの施設が適しているか、このような場合でも入居は可能か、少しでも困った場合は専門の相談員に相談することをお勧めします。入居に関することだけでなく、介護保険の申請や在宅にて利用できる介護サービスについても介護のあらゆるお悩みにお答えします。ぜひお気軽にご連絡ください。アクタガワのぺんぎん介護サポートセンター(外部リンク)

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介護福祉士
花井 敦由奈(はない あゆな)

小規模多機能型居宅介護、デイサービス、訪問介護の現場に従事し、介護福祉士の資格を取得する。訪問介護ではサービス提供責任者として様々な在宅介護の現場を経験。お客様やご家族様とコミュニケーションを図りながらニーズを探り、ケアマネジャーと連携を取りながら様々なケースに対応してきた。